東条 雅之 さん(写真左。右は亜希子夫人)
移住者色川歴:3年以上
2019年に夫婦で移住。
人や自然とのご縁(繋がり)で幸せに生きることをテーマに、田んぼでは「いろいろ米」と呼ぶ数十種類の稲を、円形に畝をつくった畑ではいろんな野菜を、自家採種した種や人からもらった種から育てています。
みんなで分かち合う暮らしを目指して、Youtube「地球家族チャンネル」で情報発信しています。
▼地球家族チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCj0ympzS7bEHF9j4KiwyBjA
聞き手:ふるさとプロボノ プロボノワーカー・チコ
Q: 棚田を守ろう会の活動に参加されている理由を教えてください。
ここ数年来、自給的な“農”や自然と調和する暮らしを目指しているのですが、自分の手で稲を育てることは僕にとって、生きることそのものだと思っています。
「棚田を守ろう会」の棚田と自分の家の周りの棚田でも稲を育てていて、田んぼをしていると、自分の食べるものを自給する喜びと共に、大地と繋がる喜びを感じることができます。
棚田の切り立った石垣を見る度に、元は原野だった場所を手で拓いて築いたんだなぁと先人の苦労が偲ばれ、感謝の気持ちが湧いてきます。
「棚田を守ろう会」の棚田は人と繋がる場にもなっていて、みんなで和気あいあいと楽しんでいます。
Q: 東条さんの棚田で作られている「いろいろ米」とは何ですか?
一般的な稲だけでなく赤米、黒米、緑米など、今年は数十種類の稲を育てていて、それらを「いろいろ米」と呼んでいます。
「いろいろ米」は栃木県の上野長一さんが繋いでいる数百種類の種を、三重県で在来種の種を繋ぐ活動をされている、たねとりまさみさんを介して頂いたものです。
元々日本には千種以上のその土地土地の在来種の稲があって、農家は代々それを植えては種を採って、また植えて…と自家採種を繰り返してきたんです。
ですが、戦後の食糧難を背景にして、化学肥料や農薬の多投で多収量となる品種が推奨されて、作業効率性でも劣る多くの在来稲は育てられなくなったんですね。農家も昔のように自家採種せず種を購入することが増え、今ではコシヒカリのように数種類のお米が主流になっています。
効率化、規格化を求めていくと、大型スーパーの進出で地元の商店街のお店が消えるように、多様な在来種の種もその土地の食文化もいつしか消えてしまうかもしれません。
化学肥料、農薬や除草剤、遺伝子組み換え等…人間の都合が過ぎるといのちや大地にとって、循環の中にいる人間にとっても、はたして健康で持続可能でしょうか。いのちや大地への慈しみや祈りを忘れずにいたいです。
「いろいろ米」を育てているのは、自分が食べて生きるためということに加えて、みんな違ってみんないーね(稲だけに)という多様な個性を愛でるため、そして種を物語と共に繋ぐためでもあります。円(お金)ではなく縁(繋がり)の視点を大切にしています。
繋いでいる種は他にもあります。
これは「むこだまし」という奈良県十津川村の粟(アワ)の一種なんですが、“お婿さんを騙す”という意味の名前がついているのは、昔白米が貴重で家になかった時に、大事なお婿さんがお正月に来るというので白米の餅に見せかけて「むこだまし」で餅をついて出したことに由来すると言われています。
こちらは、十津川村の松葉俊子さんから種を分けていただいて育てています。自分もお米と「むこだまし」を半分ずつくらい混ぜて、粟餅を作ろうと思っています。
東条さんの自給的な暮らしは電力にも及びます。
敷地内には色川内外で関心のある方たちとつくった小水力発電設備があり、川から取水して17mの落差を利用して発電を行われています。今は冷蔵庫2台分くらいの電力(最大150W)を賄えていて、さらに多くの電力を自給できるよう電気コンセントの増設を進めていらっしゃるそうです。
▲小水力発電装置。装置の中に小さなスプーンのようなものがあり、水力でそれが回ることで中心の軸が回転し電力が生まれる仕組みになっています。
▲コントローラー、インバーター、バッテリーの3点セット。色川で同じく環境問題に取り組む技術者の酒井さんに取り付けてもらったそうです。
Q: 「地球家族チャンネル」という名称で情報発信されていますが「地球家族」とは何ですか?
自分が思い描く世界観のことで、38~40億年前にいのちが誕生した海や地球がお母さんとすると、生きとし生けるものたちはみな兄弟姉妹なので「地球家族」と呼んでいて、色とりどりのいのちが響き合って輝く世界を夢見ています。
大阪府高槻市にあるJT生命誌研究館に「生命誌絵巻」という絵が展示されているのですが、その絵に感銘を受けました。
この地球上では、生きとし生けるものたちが繋がり循環しながら生きています。人間だけが繁栄すれば良いというのではなく、多様な生き物と調和しながら、美しい森や大地に抱かれ恵みを頂いて、みんなが笑顔で平和に暮らしていけたら。そんな世界をつくることをテーマに、種を繋ぐ活動や自然と調和する暮らしや地域づくりを模索しながら実践しています。
▲JT生命誌研究館の「生命誌絵巻」
多様な生きものが長い時間の中で誕生した歴史と関係を描いた作品。扇の上部は現在地球上に生きる生きもの(左端が人間)、扇の下部は最初に地球に誕生した生きもの
田舎暮らしや、人や自然と繋がる暮らしに興味がある方は、ぜひ棚田のイベントに、うちに遊びにお越しください!
色川の「棚田を守ろう会」では、地域の宝である美しい棚田の景観を守り、昔の人の知恵の詰まった棚田米作りを未来につなぐため、地域一体となって棚田の復田や維持管理を行っています。
活動趣旨に賛同し、資金面から支えていただく「賛助会員」を募集しています。
会員特典の返礼品を、棚田米のほか色川の各種産品からお選びいただけます。